麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第 3 版 C 2018 公益社団法人日本麻酔 ..


PICO
P 足あるいは足首の手術で坐骨(膝窩)神経ブロックと伏在神経ブロックを施行される患者
I デキサメタゾンとデクスメデトミジンの静注併用or デキサメタゾンのみ静注
C プラセボ(生理食塩水)静注
O 鎮痛持続時間(ブロックしてから手術部位に初めて痛みを感じるまで)

Abstract
背景
デキサメタゾンとデクスメデトミジンはどちらも神経ブロックの鎮痛持続時間を増加させる。そこで、デキサメタゾンとデクスメデトミジンの静注を併用することで、デキサメタゾンのみ静注およびプラセボ静注と比較して、鎮痛持続時間が延長するという仮説を検証した

方法
全身麻酔で足あるいは足首の手術を受け、坐骨(膝窩)神経ブロックと伏在神経ブロックを施行される患者を、デキサメタゾン12mgとデクスメデトミジン1μg/kg静注併用群、デキサメタゾン12mg静注群、プラセボ(生理食塩水)静注群の3群に無作為に割り付けた。Primary outcomeは鎮痛持続時間であり、ブロック施行から患者が手術部位に初めて痛みを感じるまでの時間とした。鎮痛持続時間の33%の増加を、臨床的に有意差ありと定義した。

結果
2施設から合計120人の患者がランダム化され、Primary outcomeについて119人が解析された。鎮痛持続時間の中央値[四分位範囲]は、デキサメタゾンとデクスメデトミジン併用群で1572分[1259~1715]、デキサメタゾン単独群で1400分[1133~1750]、プラセボ群で870分[748~1138]であった。プラセボ群と比較して、デキサメタゾンとデクスメデトミジン併用群(差:564分、98.33%CI:301~794、P

結論
足あるいは足首の手術を受ける患者において、デキサメタゾンは、デクスメデトミジンの有無にかかわらず、坐骨神経ブロックと伏在神経ブロックの鎮痛持続時間を延長させた。デキサメタゾンにデクスメデトミジンを併用しても、デキサメタゾンのみの静注と比べ、鎮痛持続時間は延長しなかった。


デキサメタゾン酢酸エステル dexamethasone acetate (別名:酢酸デキサメタゾン).

大腸および小腸の手術では、麻酔導入時にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を追加すると、標準治療単独に比べ術後24間以内の悪心・嘔吐が抑制され、72時間までの制吐薬レスキュー投与の必要性が低減することが、英国・オックスフォード大学のReena Ravikumar氏らが実施したDREAMS試験で示された。デキサメタゾン追加による有害事象の増加は認めなかったという。研究の成果は、BMJ誌2017年4月18日号に掲載された。術後の悪心・嘔吐(PONV)は、最も頻度の高い術後合併症で、患者の30%以上にみられる。腸管の手術を受けた患者では、PONVは回復を遅らせることが多く、術後の栄養障害を引き起こす可能性もあるため、とくに重要とされる。デキサメタゾンは、低~中リスクの手術を受ける患者でPONVの予防に有効であることが示されているが、腸管手術を受ける患者での効果は知られていなかった。

本研究は、英国の45施設が参加したプラグマティックな二重盲検無作為化対照比較であり、2011年7月~2014年1月に1,350例が登録された(英国国立健康研究所・患者ベネフィット研究[NIHR RfPB]などの助成による)。

対象は、年齢≧18歳、病理学的に悪性または良性の病変に対し、開腹または腹腔鏡による待機的腸管手術を施行される患者であった。

すべての患者が全身麻酔を受け、麻酔科医が決定した標準治療として術前に制吐薬(デキサメタゾンを除く)が投与された。デキサメタゾン群は術前にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を受け、対照群には標準治療以外の治療は行われなかった。

主要評価項目は、24時間以内に患者または医師によって報告された嘔吐とした。副次評価項目は、術後24時間以内、25~72時間、73~120時間の嘔吐および制吐薬の使用、有害事象などであった。

デキサメタゾン追加群に674例、標準治療単独群には676例が割り付けられた。全体の平均年齢は63.5(SD 13.4)歳、女性が42.0%であった。腹腔鏡手術は63.4%で行われた。直腸切除術が42.4%、右結腸切除術が22.4%、左/S状結腸切除術が16.4%であった。

24時間以内の嘔吐の発現率は、デキサメタゾン群が25.5%(172例)と、標準治療群の33.0%(223例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.92、p=0.003)。1例で24時間以内の嘔吐を回避するのに要する術前デキサメタゾン投与による治療必要数(NNT)は13例(95%CI:5~22)だった。

24時間以内に制吐薬の必要時(on demand)投与を受けた患者は、デキサメタゾン群が39.3%(265例)であり、標準治療群の51.9%(351例)よりも有意に少なかった(RR:0.76、95%CI:0.67~0.85、p<0.001)。また、術前デキサメタゾン投与のNNTは8例(95%CI:5~11)だった。

25~72時間の嘔吐の発現に有意な差はなかった(33.7 vs.37.6%、p=0.14)が、制吐薬の必要時投与はデキサメタゾン群が有意に少なかった(52.4 vs.62.9%、p<0.001)。73~120時間については、嘔吐、制吐薬の必要時投与はいずれも両群間に有意差を認めなかった。

死亡率は、デキサメタゾン群1.9%(13例)、標準治療群は2.5%(17例)と有意な差はなく、両群8例ずつが術後30日以内に死亡した。有害事象の発現にも有意差はなかった。30日以内の感染症エピソードが、それぞれ10.2%(69例)、9.9%(67例)に認められた。

著者は、「PONVの現行ガイドラインは、おそらく過度に複雑であるため広範には用いられていない。今回の結果は、腸管手術を受ける患者におけるPONVの抑制に簡便な解決策をもたらす」としている。

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔

[P32-5] 術後悪心嘔吐に対するデキサメタゾン予防投与は有効か?

重篤な有害事象5件が3つの研究で報告されていた。神経周囲に投与したデキサメタゾンとプラセボを比較した試験の1件では、患者1人に神経ブロック関連の有害事象(気胸または肺虚脱)が発生したが、この患者がどちらに割り付けられていたかは報告されていなかった。その他の有害事象は神経ブロックと関連がなく、デキサメタゾンの神経周囲投与と静脈内投与、およびプラセボを比較した2件の試験で発生した。プラセボ群の患者2人が術後1週間以内に入院を必要としており、1人は転倒によるもの、もう1人は腸管感染症によるものであった。プラセボ群の患者1人が複合性局所疼痛症候群(CRPS)と呼ばれる慢性疼痛症候群を発症し、デキサメタゾン静脈内投与群では1人が肺炎を発症した。安全性の問題に関するエビデンスの質は非常に低かった。

グルココルチコイドであるデキサメタゾンは術後の悪心・嘔吐を予防するが,手術部位感染のリスクを上昇させる可能性への懸念がある.

各種神経ブロックを行う際にデキサメタゾンを添加することで麻酔薬の効果出現時間

実用的国際共同非劣性試験で,手術時間が 2 時間以上,術後 1 晩以上の入院が予定されている,皮膚切開長が 5 cm を超える緊急性の低い非心臓手術を受ける成人患者 8,880 例を,麻酔下でデキサメタゾン 8 mg の静脈内投与を行う群と,マッチさせたプラセボの投与を行う群に無作為に割り付けた.無作為化は,糖尿病の有無と試験施設で層別化して行った.主要転帰は術後 30 日以内の手術部位感染とした.非劣性マージンは 2.0 パーセントポイントと事前に設定した.

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麻酔後合併症抑制においては有用な麻酔法は何か?(CQ18-1 )

麻酔法別(局所麻酔、脊髄くも膜下麻酔、全身麻酔)の比較においては早期合併症(尿閉)の予防に関しては局所麻酔が優れるが、晩期合併症は差がない(エビデンスレベルⅡ)。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」54頁より

手術後12時間の時点での痛みの強さは、プラセボ群と比較してデキサメタゾン神経周囲投与群で低く(5研究、患者257人、非常に質の低いエビデンス)、手術後24時間時点でも同様であった(9研究、患者469人、質の低いエビデンス)。デキサメタゾン静脈内投与群とプラセボ群を比較したところ、手術後12時間の時点(3研究、患者162人、質の低いエビデンス)と24時間の時点(5研究、患者257人、質の低いエビデンス)のいずれも、デキサメタゾン静脈内投与群のほうがプラセボ群よりも痛みの強さが低かった。使用したオピオイド系鎮痛薬の量も、神経周囲および静脈内にデキサメタゾン投与を受けた患者では少なかった。デキサメタゾンの神経周囲投与と静脈内投与の比較では、手術後の痛みの強さや使用したオピオイド系鎮痛薬の量に差はなかった。したがって、デキサメタゾンの投与方法のどちらか一方が痛みの軽減に優れているわけではないと結論付けた。


口腔外科手術後の悪心・嘔吐予防に対するオンダンセトロン単独投与とオンダンセトロン・デキサメタゾン併用投与の効果の比較 ..

修正 intention-to-treat 集団は 8,725 例(デキサメタゾン群 4,372 例,プラセボ群 4,353 例)であり,そのうち 13.2%(デキサメタゾン群 576 例,プラセボ群 572 例)が糖尿病を有していた.主要解析の対象となった 8,678 例のうち,手術部位感染はデキサメタゾン群の 8.1%(4,350 例中 354 例)とプラセボ群の 9.1%(4,328 例中 394 例)に発生した(糖尿病の有無で補正したリスク差 -0.9 パーセントポイント,95.6%信頼区間 [CI] -2.1~0.3,非劣性の P<0.001).表層切開創,深部切開創,臓器・体腔の部位別,および糖尿病を有する患者における結果は,主要解析の結果と同様であった.術後 24 時間における悪心・嘔吐は,デキサメタゾン群の 42.2%とプラセボ群の 53.9%に発生した(リスク比 0.78,95% CI 0.75~0.82).糖尿病を有しない患者では,高血糖イベントがデキサメタゾン群 3,787 例中 22 例(0.6%)とプラセボ群 3,776 例中 6 例(0.2%)に発生した.

人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン ..

術後の呼吸抑制は全身麻酔が脊髄くも膜下麻酔、局所麻酔に比較し有意に多いが、呼吸器合併症の発生頻度に差がない。

全身麻酔, 脊髄幹麻酔下手術後に発生したPONVに対するPONV治療薬の有効性の評価 ..

ケアネットでは、毎回1つの疾患にフォーカスし、診断・治療の基本や最新情報、ガイドラインなどを編集部が、まとめて紹介。専門外の疾患がわかりやすいと評判です。

[PDF] 2021 年 7 月 31 日の間に 附属病院にて全身麻酔手術を受けられた方

感覚神経ブロック持続時間は、プラセボ群と比較したところ、デキサメタゾンの神経周囲投与群で6時間半(27研究、患者1,625人、低い質のエビデンス)、デキサメタゾン静脈内投与群では6時間(8研究、患者499人、中等度の質のエビデンス)延長した。デキサメタゾンの神経周囲投与と静脈内投与を比較した場合、感覚神経ブロック持続時間は神経周囲投与群のほうが3時間長かった(9研究、患者720人、中等度の質のエビデンス)。

―PONV(悪心嘔吐)予防に有効なデキサメタゾンの用量についての後ろ向き研究」へのご協

注記*
局所麻酔のみで確実に実施できるのは鼠径部切開法の前方到達法のみであると思われます。

周術期のフェンタニル・デキサメタゾン・ドロペリドール・メトクロプラミド・アセトアミノフェン・フルルビ

海外の論文を日本語で要約。専門家による解説や最新の国内医療ニュースなど、医療のいまが手軽にわかります。

デカドロン注射液3.3mg(一般名:デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液)の薬効分類・副作用・添付文書・薬価などを掲載しています。

ALOHA外科クリニックの選択する麻酔はTAPPであれば全身麻酔(もちろん局所麻酔併用)、Lichtenstein法であれば局所麻酔 であり、いたってシンプルです。

研究課題名 術中デキサメタゾン投与が全身麻酔術後のシバリング発生に与える影響の検討

全身麻酔の合併症で日帰り手術を達成できない原因の一番は 術後悪心・嘔吐(PONV:post operative nausea & vomittingと言います)です。

⑤ 1 回の麻酔に麻酔薬剤を 2 種以上使用した場合であっても,使用麻酔薬 ..

上肢(肩関節から指先)および下肢(股関節から足の指先)の手術を受ける際に、デキサメタゾンを神経周囲または静脈内に投与することによって末梢神経ブロックによる痛みの軽減効果が長くなるかどうか、また、術後の痛みの強さが減少するかどうかを検討したランダム化比較試験を探した。また、デキサメタゾンを神経周囲または静脈内に投与することによって副作用や悪影響を生じるかどうかも検討した。2017年4月25日までに発表された医学文献から、末梢神経ブロックを併用した上肢または下肢の手術を受けた成人または小児のいずれかを含む論文を検索した。また、各評価項目についてのエビデンスの質を評価した。

全身麻酔剤, 利尿剤, 利胆剤, 制酸剤, 刺激療法剤, 副腎ホルモン剤, 化膿性疾患用剤 ..

①ガス麻酔ではなく完全静脈麻酔(TIVA:total intravenous anesthesia)でその頻度が減少します。

score3点以上では静脈麻酔を推奨し,Apfel score4点以上ではデキサメタゾン6.6mgの投与を

* PONV を起こしにくい麻酔方法
・吸入麻酔薬を使用せずプロポフォールによる全静脈麻酔(TIVA)を行う

[PPT] デキサメタゾン静脈内投与の鎮痛効果 帝王切開後疼痛に対する

PONV に使用できる制吐薬
欧米ではであるデキサメタゾン(デカドロン)の使用が推奨されています、わが国ではPONV に 保険適応がありません。日本でも使用できる主な薬剤は、 オンダンセトロン塩酸塩水和物 、ドロぺリドール(ドロレプタン® )、プロクロルペラジン(ノバミン® )、 メトクロプラミドメシル塩酸塩(プリンペラン® )などであります。

[PDF] 術後悪心嘔吐に対するデキサメタゾン予防投与は有効か

ロピバカインを用いた小児への腕神経叢ブロック(brachial plexus block:BPB)において、デキサメタゾンによる鎮痛時間および運動機能抑制時間への影響を検討した。全身麻酔下に上肢の手術を受ける小児を対象とし、BPBでは対照群(対照群:0.5%ロピバカイン0.4ml・kg-1と生理食塩液0.045ml・kg-1)およびデキサメタゾン群(Dex群:0.5%ロピバカイン0.4ml・kg-1とデキサメタゾン0.1485mg・kg-1)の2群に無作為に分類した。Dex群の鎮痛時間は1,125±125分と対照群649±118分と比べて有意に延長したが、運動機能抑制時間に延長は見られなかった。

討した。【方法】全身麻酔下で行った婦人科の開腹手術又は腹腔鏡下手術を対象とし、デキサメタゾンの

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口腔外科手術後の悪心・嘔吐予防に対するオンダンセトロン単独投与とオンダンセトロン・デキサメタゾン併用投与の効果の比較